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日々の雑感、書評などを公開していきます。つまらない本などありません、つまらないと感じたならば、それは自分がその本の面白さを見つけられなかったのです。

ロートレック荘事件~ミステリーのお手本~

言わずと知れた文豪、筒井康隆先生のロートレック荘事件をご紹介します。

 

ロートレック荘事件が刊行されたのは1990年です。筒井康隆のデビューが1960年ですので、作家として30周年の折に執筆されたようですね。

 

ロートレック荘事件 (新潮文庫)

ロートレック荘事件 (新潮文庫)

 

 

筒井先生は元来SF作家ですので、ミステリファンの皆様にはあまり馴染みが無いかもしれませんが、この他にも富豪刑事を描くなど、ミステリへの造詣も深い模様です。

 

富豪刑事 (新潮文庫)

富豪刑事 (新潮文庫)

 

 

さて、ロートレック荘の話に戻ります。

ロートレック ”と聞いてピンと来る方もいらっしゃると思いますが、この作品の主人公の容姿はかのロートレックと酷似しています。

下半身の成長が幼少期で止まり、アンバランスな体型をしているのです。

幼い頃の事故によって下半身の発達が止まってしまった主人公は、事故の原因を作った幼馴染みに支えられながら人生を生きていき、自立した大人へと育ちます。

そして、物語の舞台であるロートレック荘へ招待されることになるのです。

 

ロートレック荘の美女たちと交流を深める主人公でしたが、突如邸内に2発の銃声が響き渡ります。

銃声のした方へ駆けつける主人公たちでしたが、現場には拳銃によって殺害された美女の1人がいたのです。

この事件をきっかけに、ロートレック荘の3人の美女たちが次々と拳銃で殺害されていくのですが、果たして誰が犯人なのか・・・。

 

以上が物語のあらすじです。以下感想。

 

 

語れば語るほど、ネタバレになってしまうので、詳細は書きませんが、この物語に感じるのは筒井先生の「これがお前らの差別意識なんだ」という問いです。

私自身、障がいや病気に対して、差別意識は持っていない方であるという自覚がありましたが、この作品を読んだ後には結局自分にも差別意識障がい者より自分の方が優れているという感情があったのでは無いか、という疑問を持ちました。

 

人生は短く、楽しいことやつらいこと、様々な経験を積むことには限度があります。

しかし、読書は、たとえそれが創作であっても、他人の人生を生きるという経験をさせてくれると思います。

そういった意味で、この物語の犯人の歩んだ、悲しい人生を体験できたことは、貴重な経験なのでした。